■吹奏楽コラムVol.8
お待たせしました!!
第7回「吹奏楽コラム♪」は 作曲家、八木澤 教司先生です。
聞き手:神長 一康・2003.12.4掲載)


 

八木澤 教司(やぎさわ・さとし)
1975年4月3日生まれ。千葉県在住。武蔵野音楽大学卒業。
同大学大学院音楽研究科修士課程修了後,研究員として二年間研鑽を積む。
作曲を浦田健次郎、田中均、萩原英彦の各氏に、トランペットを関根剛二氏に師事。
作品はオーケストラ、室内楽、合唱、 邦楽など幅広く手がけているが、 近年は 《吹奏楽のための音詩「輝きの海へ」》《吹奏楽のための詩曲「はてしなき大空への讃歌」》 《稜線の風―北アルプスの印象》など意欲的に吹奏楽曲を手がけている。
又、クラリネット八重奏曲《カプリッチョ》、 金管八重奏曲《イントラーダ》など アンサンブルレパートリーも毎年出版し好評を得る。
その他,各種コンクール審査員、客演指揮、演奏、音楽雑誌『The Flute』『The Clarinet』 『The SAX』[アルソ出版]での執筆や編曲など、多彩な活動を展開。
本年度は千葉県で開催された第54回全国植樹祭テーマ音楽(天皇皇后両陛下、お手植え・お手播きの音楽)の編曲も担当した。
21世紀の吹奏楽“響宴”会員。



それでは八木澤先生宜しくお願い致します。
Q1、音楽との出会い、また作曲を始められた経緯は何ですか?
★中学時代に吹奏楽部に入部したことで初めて音楽と出会いました。
神長さんをはじめ多くの作曲家の皆さんのように,小さい頃からピアノを習っていたとか,
ヴァイオリンを習っていたということはありません。
ほんの“なんとなく”という気持ちが音楽との最初の出会いでした。

中学三年生の頃に偶然,ガブリエリの「第一旋法による八声のカンツォン」を聴く機会に恵まれ,
その神秘的な響きと対位法の魅力に憧れ,作曲に興味を持ち始めました。
師匠である浦田健次郎先生のもとへレッスン(高校二年生から)に通うまでは,
自分なりに好きな作品を分析したり,真似したりして遊んだ記憶があります。

Q2、中・高校生時代、吹奏楽体験やその他音楽体験などございましたらお聞かせ下さ い。
★ほんの“なんとなく”入部した吹奏楽部でしたが,かなり専門的で厳しい環境でした。
全くの素人で楽譜が読めなく,楽器も初心者である私は苦労が絶えませんでした。
部内での楽典のテストなんか音大入試レベルでしたョ(笑)

この間の移転(10月)で当時の演奏のカセットテープが出てきて 久しぶりに聴きました。
私が中学一年生の時の関東大会の演奏(当然私はメンバーではない)で,課題曲が三善晃さんの「深層の祭」,
自由曲がサン・サーンスの「交響曲第三番オルガン」でした。
「深層の祭」は今聴いても素晴らしい演奏で鳥肌が立ちました。
今度誰かに聴かせてあげよう!そうしよう! あっ,すみません。脱線気味でした。
次のご質問を!

■高校ではどうでしたか?(神長)
★高校では作曲の勉強に集中しました。
もちろん基礎的なソルフェージュやピアノなども。
吹奏楽がきっかけで音楽と出会ったことから 西洋音楽の知識が断片的だったので色々と聴きあさりました。
毎日,和声や対位法の課題を朝方近くまでやり,数時間寝て学校に行く。
そして毎週日曜日レッスンへ行くのが日課でした。

Q3、大学・大学院時代はどのような音楽経験をされましたか?
★吹奏楽からほとんど遠ざかっていました。
西洋の古典的な作品に多く触れ,音楽の根源的な語法の探究をしました。
又,いわゆる“現代音楽”にも深く関わり,その魅力の虜にもなりました。

大学4年生の時に作曲家,伊東乾さんのアシスタントとして,ジョン・ケージの遺作コンセプトである
「オーシャン」の日本初演にも関わり,生でマース・カニングハム舞踊団の舞台に触れられたことは
特に感激でした。 その他,伊東さんには大学では学ぶことのできない広い世界を体験させて頂きました。

中学時代以来,再び吹奏楽に深く関わるきっかけとなったのは大学院の時に
作曲家,広瀬勇人さんの薦めで 21世紀の吹奏楽“響宴”に作品を応募したことでした。

Q4、お好きな作曲家、またお好きな作品は何ですか?(ジャンルは問いません)
★好きな作曲家というと,G.ガブリエリ,J.S.バッハ,ブラームス,
ラフマニノフ,レスピーギ,
イベール,ラヴェル,デュティーユ,湯浅譲二,伊東乾ほか多数ですね。

★好きな作品はたくさん有り過ぎるので困りますねぇ。吹奏楽作品に絞りましょうか。
良く自宅で聴いている作品は,主よ,私を導きたまえ(ギリングハム)
逍遥(飯島俊成)・吹奏楽のためのプレリュード〜「時計台の鐘」の旋律による(鈴木英史)・
吹奏楽のための序曲「平和と栄光」(伊藤康英)という感じです。

Q5、八木澤作品「フランボワイアン〜大地に広がる炎の花」についてお伺い致します。
この作品は先生の人気作品、”吹奏楽のための音詩「輝きの海へ」”、
”「稜線の風」〜北アルプスの印象”に続く シリーズ作品になりますが、
ご自身が持つ作品に対するイメージはどのようなものでしょうか。

★作品の出来るまでの経緯や解説は御社のホームページに載っていると思うので
今回は少し違ったお話をしましょうか。

実はこの作品を書いている頃,富山ミナミ吹奏楽団の委嘱で書いた「稜線の風―北アルプスの印象」を
聴かれたという方々から多数のご感想やお問合せのメールを頂きました(ありがとうございます!)。
その内容の中で「演奏したいのですが部員の人数が少なくて・・・」という声が多かったことから,
“「稜線の風」のような楽想を少人数でできたら!!”というアイディアが浮かんだのです。
ちょうど「フランボワイアン」の委嘱団体であるジャパン・チェンバー・ウインズは小編成バンド。
この機会に「稜線の風」の子供分を生み出そうと思ったのです。
グレードも中級程度で演奏時間も6分強なので気軽に演奏できますね!

Q6、「フランボワイアン〜大地に広がる炎の花」は八木澤作品に多く見られる美しいコラールが歌われます。
このコラールが作品の大きな魅力の一つかと思われますが、今回のこのコラールには先生のどのような想いが
込められているのでしょうか。
また、「フランボワイアン〜大地に広がる炎の花」を演奏する際、コラール部分も含めまして楽曲全体の
演奏アドバイスをお願い致します。

★ このコラールは今までの私のコラールと少々異なり4/4拍子で書いています。
私は3/4拍子以外のコラールはほとんどなく(本日現在では多くなっていますが),
「輝きの海へ」「稜線の風」のシリーズとしては新しい傾向でした。
聴く人がどこか懐かしくなる,温かい牧歌となっていますのでぜひ心を込めて歌って頂けましたら幸いです。

Q7、先生は作曲活動と同時に客演指揮、吹奏楽指導にも多く携わっておりますが、
指揮を振られる際、 音楽づくりは常にどのようなことを心掛けておりますでしょうか。

★ 私は指揮や吹奏楽指導は専門的な勉強をした訳ではありません。
ですが最近は縁があってお声をかけて頂ける機会が増えたもので,私自身も一緒に勉強させて頂きながら
バンドと交流させて頂いています。
何よりも現場を知ることが大切ですし,中学・高校生の意欲的な姿を見ることは創作意欲にも繋がります。

私が指導させて頂く時は「聴衆の心に響く音楽」を目指すよう伝えています。
基礎的な練習は普段の練習でされていると思うので主に作品の持つメッセージを
把握できるように工夫して指導しています。

具体的な目標が曖昧であると“なんとなく”な練習が続きます。
作曲者の気持ちや作品の持つイメージを伝え,今後はそれを達成するための
基礎練習をするよう呼び掛けています。
一番大切なことは“音楽を楽しみ伝える”ことだと思っています。

Q8、今後の活動、現在手掛けられている作品などをお聞かせ下さい。
★ 今月にまず吹奏楽曲が二つ初演されます。
■ペル・ソナーレ[富山ミナミ吹奏楽団委嘱作品](12/7初演)
■レムリア―失われた大いなる遺産[広島大学吹奏楽団委嘱作品](12/13初演)

今月,創作予定曲は,
テュービアム委嘱作品(バリ・チューバ四重奏)
千人の音楽祭テーマソング(管弦楽,吹奏楽,邦楽の融合)
奈良県立片桐高等学校吹奏楽部委嘱作品
越谷市民交響楽団創立20周年記念委嘱作品
航空自衛隊中部航空音楽隊委嘱作品
ですが,全ては書き終わらないでしょう・・・。

様々な質問にお答え下さいましてありがとうございました!
それでは最後になりますが、このページも将来を担う、若き小中高生のみなさんが
たくさんご覧になっている事と思います。
吹奏楽に取り組む小中高生のみなさんへ八木澤先生からメッセージをお願い致します!

音楽は「心」です。単に技術を磨くことに止まらず, 楽譜から作曲家の残した多くのメッセージを読み取り,
それに魂を込めて聴衆へ語りかけましょう。
皆さんの演奏を笑顔で聴いてくださるお客さんが増えると良いですね!


八木澤先生、たくさんのお話どうもありがとうございました。

八木澤先生に質問などございましたら下記メールまでお気軽にどうぞ♪
またHP
作曲家 八木澤教司のホームページ」もございます。
ぜひご覧下さいませ!

貴重なお話ありがとうございました!!

★今回のご意見・ご感想、八木澤先生へのメッセージなど
ぜひお待ちしております!!
メールでこちらまでお願い致します。

 

 

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